東大和市の歴史と文化を今に伝える旧吉岡家住宅が、今年も秋の公開を迎えました。
令和7年10月31日(金)~11月2日(日)
旧吉岡家住宅は、国登録有形文化財に指定されており、その趣深い佇まいを鑑賞できるのは、毎年・春と秋の年2回のみ。訪れる人にとって、貴重な文化体験の場となっています。
旧吉岡家住宅は、日本画家 吉岡堅二(1906–1990) 氏の住居兼アトリエとして知られています。
吉岡堅二氏は、戦前から戦後にかけて活躍し、近代日本画の革新に大きく貢献した画家です。
・自然や動物を精緻に描き出す写生力
・大胆で洗練された構図
・伝統技法の上に独自の美意識を築く姿勢
こうした特徴から、「写生の吉岡」「造形の吉岡」と称され、日本画壇で確固たる地位を築きました。
多摩地域とも縁が深く、東大和の自然の中で創作を続けたことが、作品に落ち着いた色調や静謐な情感をもたらしたとも言われています。
晩年には文化勲章受章者とも交流があり、海外でも高く評価されるなど、日本画の枠を越えた活動を展開しました。
研究の進展により、吉岡堅二氏が、世界的にも著名な画家 藤田嗣治(レオナール・フジタ) と交流していたことが明らかになりました。
藤田嗣治は、パリを中心に活躍し、「乳白色の肌」と呼ばれる独自技法で世界の美術界に名を刻んだ日本人画家です。
洋画界では唯一無二の存在であり、日本とフランスの両方で高い評価を得ています。
吉岡堅二が日本画、藤田嗣治が洋画という異なる分野に身を置きながらも、
・真摯な写生姿勢
・日本的美意識の探求
・芸術の本質への追求
といった共通点が交流を育んだと考えられています。
旧吉岡家住宅のアトリエに立つと、この芸術的刺激が往来した時代の余韻を感じ取ることができます。
住宅内部には、吉岡堅二氏が実際に使用したアトリエが今も残されています。
自然光の入る穏やかな空間は、創作の時間がそのまま閉じ込められたようで、画家の息遣いを感じることができます。
じっと耳を澄ませば、絵筆の音まで聞こえてくるかのような――
そんな独特の静けさが訪れる人を包み込みます。
現在、東大和市郷土博物館では、「吉岡堅二 展」が開催され、代表作や資料が展示されています。
旧吉岡家住宅と合わせて鑑賞することで、
「暮らし」→「創作」→「作品」
という流れで吉岡氏の世界観を深く味わうことができます。
旧吉岡家住宅の庭に立つと、木々のざわめきと建物の静けさが調和し、訪れる人を温かく迎え入れてくれます。
ここは、今の時間から少し離れ、過去と現在が交差するような特別な場所。
まさに――
「時空を超えた空間」
吉岡堅二が生きた時代の空気に触れ、日本美術の歴史に寄り添うひとときを感じていただければ幸いです。


